1年半で前年比200%の売上を達成!キャンディメーカー・Kanroが取り組んだ『ECを中心としたDX戦略』【TUNA×カンロ株式会社】

カンロ株式会社
デジタルコマース事業本部長兼コーポレートコミュニケーション本部長 : 内山 妙子さん
1年半で前年比200%の売上を達成!キャンディメーカー・Kanroが取り組んだ『ECを中心としたDX戦略』【TUNA×カンロ株式会社】

創業110年、『カンロ飴』や『ピュレグミ』などのヒット商品を生み出し続けるキャンディメーカー・カンロ株式会社。

そんなカンロ株式会社が2021年にオープンしたのが、「TUNA」のベーシックパッケージにて構築した『Kanro POCKeT』オンラインショップ。

咀嚼音ASMRで注目を集めた『グミッツェル』をラインナップする『ヒトツブカンロ』や、オンライン限定の商品を取り扱うオンラインショップとしてオープンし、当初の予想を大きく超える売上から、カンロ株式会社の“新たな軸”として頭角を現している。

今回は、カンロ株式会社にてデジタルコマース事業本部長兼コーポレートコミュニケーション本部長を務める内山妙子氏と、「TUNA」を提供する株式会社RESORT Co-Founder & Chairmanの石川森生氏に、メーカーが抱えるECへの課題を踏まえ、ソリューションとなるDX戦略についてディスカッションしていただいた。

 

石川:まずは『Kanro POCKeT 』を立ち上げた背景について、当時どんな企業課題があったのか、改めてお聞かせいただいてもよろしいですか?

内山:実は当社では昔ECをやっていたことがあったんですが、赤字続きで人員コストもかかるしで、一旦クローズしていたんです。『やっぱりメーカーのECは難しいな』っていうところが社内的にもあったんですけど、コロナの影響で売る場所がなくなってしまった商品があって…。賞味期限がそんなに長いものじゃなかったので、どうしようかと。お客様が欲しいと言っても売り場がないから、というきっかけで急遽オンライン販売を行うことになったんです。
ちょうど弊社の『グミッツェル』という商品がASMRで話題になった時だったことと、新宿ミロードで『ヒトツブカンロ』の店舗がオープンをしたのも重なったので、SNSでPRを打ったところ、すごく売れたんですよね。タイミングが良かったのもあるとは思います。
その後、ECでの販売を強化すべく全社プロジェクトを発足させ、『KanroPOCKeT』を構築して現在に至ります。

 

 

石川:ECサイトオープン前からTwitterのフォロワーが10万人を超えていらっしゃったので、SNSからの流入効果も大きかったですよね。御社でのECサイトの位置付けとしては、『流通の店舗を増やす』という目線なのか、それとも『独自の別の軸』として捉えていくのかというと、どちらでしたか?

内山:別の軸、ですね。社全体の課題として、『ECで販売チャネルを新しく持つ』ということと、『SNS戦略をどうするか』という2つがあって。その課題に対してどうアプローチしていくかと考えた時に、もっと入口のところから商品を検索して、比較して、購入して、カスタマーサービスなどでコミュニケーションが発生して、という体験全てがデジタルマーケティングだよね、と。
その1番真ん中になるのは、やっぱりECだろうということでTUNAに構築をお願いさせていただくことになった形ですね。
最初はShopifyのことも全く分からなかったのですが、アプリで機能を追加していくという仕組みを実際に見せていただけて分かりやすかったですし、TUNAはパッケージだったのでデフォルトでもデザイン性や機能性が高くて、金額的にも始めやすかったのが決め手ですね。

石川:パッケージでスタートしやすいというところが他社さんとの差別化ポイントでもあるので、そこを評価していただけて大変ありがたいです。実際プロジェクトに入らせていただく前に、以前調査されたアンケートのデータもご共有いただいたんですが、『Kanro』という名称に対しての認知は高いんですけど、商品のブランドとKanroの結び付きが実は意外と弱いみたいですよね。メーカーさんだと割とよくある課題かなとは思うんですが、Webを使ってそこの結び付きを強めていくことが出来たら良さそうだなと思ったのを覚えています。

内山:そうですね。一般流通ってスーパーやコンビニの売り場のどこに置かれるかってコントロールできるわけじゃないので。バラバラに置かれるわけですよね。お客様は、必ずしもKanroの商品と認識して買うのではなくて『商品名を見て買う』んです。だからこそWebサイトに来て、商品一覧に『ピュレグミ』や『カンロ飴』『グミッツェル』が並んでいるのを見て商品ブランドとKanroブランドを同時に認知してもらえるのはメリットがありますね。 KanroにとってのDXは、ECサイトでの売上を上げるというのはもちろん、最終的にはWebから入ったお客様が店舗の棚の前で『Kanroの商品だから選ぼう』となることを理想と捉えています。

 

 

石川:EC事業をやるメリットは複数あるとは思うのですが、大きなポイントは顧客データが持てるところだなと思っていて。 顧客データ持ってどうするのかっていうと、僕らの言い方をすると『リテンションをかけられる』っていうことなんです。要するに、顧客に対してコミュニケーションを直接取れる状況を作れる。まずは入り口となる商品から顧客接点をもって、「あ、この商品もKanroなんだ」っていうのを繋げていって、コミュニケーションを他の商品にも繋げていければ面白いことができるだろうなと考えていました。
あと印象的だったのは、DXの範囲に『カスタマーサポートを含めます』とおっしゃっていたことです。その背景にはどんな理由があったのでしょうか?

内山:カスタマーサポートって、お客様に1番近いところなのに、やっぱりどうしても『クレーム係』みたいになってしまうところが世の中的にあって。その状況を変えていきたいというのがありました。従来のアナログな対応から、もっとデジタル化してあげたら効率的だなということで『FAQ』整理みたいなところに繋がっていったと記憶しています。

石川:コロナで電話受付を担当するカスタマーサポートのメンバーを1か所に何十人も集めるっていうことが、もしかしたらできなくなるかもしれないし、というのもおっしゃっていましたよね。

内山:そうですね、そういう背景もあってコロナ禍は電話受付を止めたんです。電話受付を止めると、困ったことがあったとしても「電話をするよりもその場で解決したい」っていうようなニーズがあるという気づきがありました。カスタマーサポートの効率化だけじゃなく、『お客様の声を拾う』という意味でもFAQの充実とか、コンタクトセンターの充実に意味があったと思っています。今はFAQの1ヶ月の閲覧数が年間トータルの問い合わせ数を超えてきていて、今でもどんどんFAQが増えてるんですよ。

石川:素晴らしいですね。最初のタイミングで仕込んだ甲斐があったというか。VOC(Voice of Customer)を顧客管理と同じレベルでデータベースに持っておけば顧客サービスを強化することにも利用しやすいですしね。

 

 

内山:割と『こんな商品が欲しかった!』とか、『もっとこうだったらいいのに』みたいなことを書いてくれるお客様もいるんですよ。そういう要望が多いことも分かったので、ご意見箱みたいなものを作りました。

石川:カスタマーサポートに届いた声を手に入れられると、企業のネクストアクションが変わってくると思うので、そのデータが取れているのは大きいですね。寄せられた意見を商品に反映するようなスキームも今後は考えているんですか?

内山:すでにCS向上委員会というお客様の声を商品改良に繋げていく機関が立ち上がっているのですが、寄せられる意見を非常に参考にしています。プロモーションに対する分かりづらさみたいな意見があれば、直接そのプロモーションを企画してる部門に返して改善しています。

石川:すでに活用していらっしゃるんですね。今後CRMの方にも使えるネタがあったりするかもしれないですよね。
あとは自社ECで販売する『商品』についてなのですが、メーカーさんが自社ECでスーパーやコンビニへ卸しているのと同じものを売ると、卸業者の方からネガティブな印象を持たれたりすることもあると思うんです。御社のECでは一般流通していない専売商品を中心に販売していると思うのですが、その辺りは最初から戦略として持っていたのですか?

内山:ECで売っている商品と流通に乗せる前提のものって、商品開発のコンセプトの考え方やマーケティング的な狙いみたいなところも含め、もう最初から全然別のものとして考えていました。実際、コンビニで買えるものを、モールじゃないオンラインショップでなかなか購入しないのが現実だと思うので。

石川:おっしゃるとおりですね。最初からそこを見据えて、Web専売品を開発されたというのはスピード感を持ったECの立ち上がり要因の一つな気がします。さらに、割と早いタイミングからサブスクの仕組みを入れるという意思決定をしていただいてたと思うんですけども、最初からサブスクありきでECを考えられていたんですか?

内山:むしろ逆で、最初はサブスク自体にあんまりいい印象を持っていなかったんです。お客様からみて、プラスだけでなくマイナスのイメージもあるのかなと。

石川:おっしゃるとおり、解約がしづらいなどのマイナスのイメージもありますからね。大きな会社になればなるほど、ステークホルダーも多い中で定期購買をスタートするには難しさがあると思います。

内山:マイナスの印象を懸念してはいたんですが、Shopifyの「やさしいサブスク」はクリックひとつで簡単に解約ができ、従来のサブスクの仕組みのマイナス面がクリアされているんだなということを理解して、それだったらちょっといいかもしれないなと。さっきEC運営担当者と話したら、登録してくださっている方がけっこういるみたいです。

 

 

石川:素晴らしいですね。御社の企業規模からすると、まだまだパーセントとしてはほんのわずかだと思うのですが、サブスクのモデルを取り入れて顧客との定期的な接点を持ったということ自体が非常に画期的だなと思います。いろんな施策を取り入れて運営されていていると思うのですが、売上の数字的には好調でしょうか?

内山:好調です。中期経営計画書の数字を上回っていますし、営業利益もすごく高いです。『Kanro POCKeT』をオープンしたのが2021年でしたが、2022年の売上は200%超に達していますね。
目玉商品の『グミッツェル』に関しては、在庫補充してもらった瞬間に完売する状態ですよ。最初は『月100万円いけばいいね』ぐらいの感じだったので、予想を大きく超える伸びが続いています。

石川:どこが天井か見えないくらいのポテンシャルですね。しかもリリースしてからまだ1年半しか経っていないにも関わらず、御社でDXのための組織も組成され、本当にいろんなことを新しくやっていくスピードが早いなという印象です。

内山:今度はどうやって間口をもっと広げていくか、というところで自社のものだけに限らず商品ラインナップを広げようとしています。
すでに他社さんとコラボ商品を開発していて、今後ダブルネームのものを充実させていく計画を立てていますね。コラボ先のファンも一緒に盛り上がれるような企画になればいいなと。コラボ先も知る人ぞ知るみたいなところを発掘していくのが醍醐味な気がしています。

石川:とても面白いですね。僕はWebのマーケティングの中でも特に面白いのがUGCだと思っていて、お客さんが拡散するところまでやってくれるっていう熱量の高さが生まれると本当にいい。そういう新しい戦略の着地点としても、ECサイトが活きてきそうですよね。
今よりもさらにオンラインショップの会員数が増えてきた時に新商品の発表だったり告知をやると、Web起点でのさらなるインパクトが生まれたり。このペースでいけば近い将来、その状態が訪れるんだろうなと思っています。これからもメーカーDXの成功を牽引していっていただけることを期待しております。

 

 

【Kanro POCKeT】

日々の生活のなかに、もっとsweetな時間をつくりたい。糖の可能性を追求した今までにない製品に挑戦したい。ファンと一緒に新しいおいしさをつくりたい。という思いから生まれたカンロ株式会社が運営するオンラインショップ。ASMRで話題のヒトツブカンロ「グミッツェル」や、持ち運びやプチギフトに最適な「小さな缶キャンディシリーズ」を販売。
公式オンラインストア:https://kanro.jp

<カンロ株式会社>
本社所在地:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル37階
代表者  :代表取締役社長 村田 哲也
Webサイト:https://www.kanro.co.jp